日々のこと

コミュニケーションのデザイン 敷地

コミュニケーションと建築というと、建築主の方と私達が会話を重ねていって完成する建物のことを指しているというふうに思われるかもしれない。

今考えているコミュニケーションと建築は、もっと広いイメージをするようになってきている。

建築主の方がすごく特殊な要望があり、それ故に他にはない建物ができているかというとそればかりではない。

一般的な希望や内容であっても、敷地との応答によって、建築は大きく変わってくる。

敷地外に対して対話的になったり、寡黙になったり、存在感を少なくしたり、対比的だったりと、建築物でしか出来ないコミュニケーションのようなものがある。

敷地内部でも、敷地の微妙な段差へどう建築側で応答するかで、プランのアイデアが変化していく。

建築内部では方位によって、太陽の動きが違ってくるので、光の入り方が大きく変化していく。

光が入ってくる窓も、プライバシーといった外部環境との関わりをどう応答するかによって、採光位置の取り方が変わる。

傾斜地や変形地、狭小地、旗竿敷地といった特徴のある敷地をはじめ、

郊外の画一的に見える土地も、微細な状況を観察することで、敷地の独自の特徴が見えてくるようになり、建築の可能性が年々広がってきている。

コミュニケーションのデザイン リアクション

建築の設計に長年携わっていて楽しさを感じるのは、建築主の方や土地が他には無いというところだ。
どんな方から依頼が来るのかは全くわからないし、どんな場所で建てるかもわからない。
日頃からの建築的な経験や情報の積み重ねは貯めていっている。
だが、いざ建築主さんや土地との出会いがあった時から求められることの重要なことのひとつは、どうリアクションをするかというところだと思う。
土地や希望や、建築主さんから漂う気配などを汲み取った上で、それらを貫いていく構造のようなものを見出して、コンセプトを考えて提案する。
その時に、昔考えていたアイデアや知識が、アイデアの想像を妨げたりすることも多くある。
そして、提案した内容に対してのリアクションも様々で、予測不可能である。
それらの反応は、計画当初から織り込んで無かったりするので、そこでどうリアクションするかを考えることは、設計の実務におけるデザインの醍醐味であったりする。
施設など不特定多数が利用するような建物であれば、変化を織り込んだ形式を主とした建築を提案すれば、ある程度の希望の変化も調整しつつ進めれるかもしれない。
ただ、住宅規模でのそういった路線は、内容が希薄になったり、形式が感じられすぎて、どこかよそよそしい感じや既視感のある建物になることもあるので、注意が必要である。
住宅規模の建物においては、リアクションの能力を高めることが、最終的に他にはない空間デザインの提案が出来上がる重要な要素のひとつではないかと考えている。